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住宅すごろくのリセットをT大学教授のY氏は「希望格差社会」という本の「はしがき」の中でこのように書いています。 「日本社会は、将来に希望がもてる人と将来に絶望している人に分裂していくプロセスに入っているのではないか。
これを私は『希望格差社会』と名付けたい。 一見、日本社会は、今でも経済的に豊かで平等な社会に見える。
フリーターでさえ、車やブランド・バッグをもっている。 しかし、豊かな社会の裏側で進行しているのが、希望格差の拡大なのである。
「格差社会」という言葉は2006年を象徴するキーワードとなりました。 この問題をストック、とくに「住宅」に引き寄せて考えてみると、バブル時代の負の遺産を引きずっている旧世代と、それ以降に社会人として登場した新世代の聞には、大きな意識の格差があるように思います。
もし、「住宅すごろく」での新築二戸建てをすごろくの上がりと考えると、ローンを抱えたまま売却できない住宅を所有し続けることは、駒を前に進めることもできずに、格差が拡大する状態にあるということで、将来に対して前向きな希望を非常にもちにくい状況にあるといえます。 しかし、そのような「住宅すごろく」を思い切ってリセットして、今の住宅を終の棲家と考えることができれば、そこに見えてくる景色も少し変わるのではないでしょうか。
この本で私が伝えたいのは、バブルの負の遺産をもう少し前向きなエネルギーに変換する「鍵」は何かということについて考える、ということでもあるのです。 仮住まいか永住へ私たちが住宅に求めるのは、どのような価値でしょうか。

かつては「一国一城の主になる」戸建て住宅を所有する、ということが一人前の社会人であることの証だとされました。 もう少しいえば、いい大学を卒業して、安定した会社に就職し、結婚して子どもをもうけ、新築の戸建て住宅に住むということが、一種のステータスでした。
住宅、つまり家とは、そこに住む家族を包み守る器であると同時に、私たちの生活の原点です。 この家にどのような価値を求めるかということは、私たちがどのような価値観をもって生きるのか、ということと同義であるといっても過言ではありません。
マンションの区分所有者を対象とした国土交通省が行ったアンケート調査の結果を見ると、1993年頃を境にして「マンションは戸建てを手に入れるまでの仮の住まいだ」と考える人の割合は低下し、反対に「今のマンションに永住するつもりだ」とする区分所有者の割合が上昇し、2003年には全体の約半数となっています。 数年前の調査では「永住希望」と「いずれは住み替えるつもりだ」との答えがそれぞれ約30%程度で措抗していました。
それを思うと、この5年で確実に永住志向が高まりつつあることが読み取れます。 さらに2005年に長谷工総合研究所が行った調査では、マンションにこのまま永住するという回答が60%を超えています。
このようなマンションへの永住志向が増加している背景には、バブルの崩壊や景気の低迷の中で「いつかは庭つき一戸建て」という住宅選択が経済的な理由で難しくなったという消極的な理由ばかりでなく、この十数年で私たちの家族や結婚に対する考え方、あるいは価値観に大きな変化が生じたことが、住宅に対する考え方にも影響を与え、マンションへの永住志向というかたちであらわれているのだと思います。 価値観の変化は、住宅に関しては例えば、社会の中に次のようなかたちで出現し、将来さらに変化を加速させるに違いありません。
そのキーワードは、「マンション選びのポイント規模世帯」と「永住志向」そして「都心居住」です。 それらを分析すると、次のようなことが見えてくると思います。
永住志向バブルの崩壊を経験したことで、住宅を転売したりして、資産運用の道具として使うのでなく、便利さや生活環境、人間関係などに利用価値を見いだす選択をするようになり、永住志向が高まる。 その結果、スポーツクラブの利用、大学院や資格専門学校などでの勉強など、時間の使い方が多様化し、情報に満ちた都心に住むという選択が有力になる。
団塊の世代の台頭団塊の世代が定年を迎えリタイアする時期にさしかかる。 彼らは、これまでの中高年以上にフットワークが軽くリタイア後の余暇の充実を求めている。
夫婦や友人とコンサートや演劇、レストランなどでの時間を楽しみ、語り合える環境、ネットワークを求めて、郊外の戸建てより地下鉄やタクシーで気軽に移動できる都心のマンションに住むことを志向する。 このことが、さらにこれからの新しい高齢者の生活に活力を与える。

1999年には約30%であった世帯人数が2人以下の世帯の割合が、2003年には約40%へと、急激に増加しています。 また、かつては夜間人口の減少に悩んでいた東京の都心3区では急激な居住人口増で学校や保育園などの数や容量が足りなくなるという現象が起きています。
データによると、東京では1990年からの5年間に2・4%もの人口減少がみられたのに対して、1995年から2000年までの5年間でタワーマンションというのは、いわば数百人の区分所有者から出資を募り、大きな資本力を武器に超高層で大規模なマンションを建設し、さまざまな付加価値をつけて高機能化、高級化をすすめたものです。 上層階からの眺望や高級な共用施設、多様なサービスなどは、もはやホテルに類似、匹敵するもので、戸建て住宅とはまったく別の住宅であり、異質の居住形態です。
多数の権利を集合し、共同化することで「住まい」にさまざまな付加価値をつけることができる、これがマンションの特徴である「共同化による高付加価値」ということです。 「マンションか戸建てか」について考えてみると、結局はその人が「住む」ということにどのような価値を見つけるのか、という問題に行き着いてしまいます。
「住む」ということの意味が、かつてのように「食べて」「寝る」ための場所から、時にはオフィスやアトリエになったり、人や出来事に出会う場となったり、とさまざまな生活への新しい付加価値を与える拠点に変わりつつあるとすれば、郊外の戸建て住宅よりも都心のマンションに住むことが、官マンションを選ぶ場合でも、超高層か中層タイプかの選択肢がある。 はるかに有利な選択であることになります。
さらに、近頃は都会で増加する凶悪犯罪や大地震の危険から家族をいかに守るかということが、住宅選択の大きな基準となりつつあります。 例えば一部の地域では、関連団体が実施する防犯モデルマンション制度が運用されていて、エレベーターやエントランスといった場所ごとのさまざまな防犯対策基準が設けられ、審査が行われています。
防犯対策という点では、マンションの優位性は否定できないと思います。 私は、マンションの管理組合の集会や説明会の場で、ことあるごとに「マンションの区分所有者は同じ船に乗った運命共同体だ」ということをお話しします。
でも、最初のうちは「運命共同体」ということが実感として伝わらないようです。 大半の区分所有者は、マンションや団地も戸建て住宅が上下に重なったもの、としか考えていないのでしょう。
権利というものは、まさに目に見えないものであるからです。

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